2016年2月1日月曜日

「あの日」小保方晴子さん


分野はまるで異なるが科学技術の世界の末端で生活するものの一人として
どうしても読まなければと思っていた
そして、あのSTAP細胞ねつ造の事件(あえてこう呼ぼうと思う)が明るみに出たときから
多くの疑問が頭を離れなかった



本を読んでもなお、
その内容は、これまで語られなかった、否、語っても闇の中に葬られ続けた
主要な登場人物の言い分がようやく明らかになっただけであって
「真実」と言えるものなのかどうかはわからないし、事件の全貌でもない
が、文章というのは書かれている内容そのものとともに
書きぶりや構成から、どう隠そうとも「人となり」のようなものが匂い立つものである
この文章から私にはどうしても邪悪な匂いは嗅ぎ取れなかった

たしかに、彼女の若さ、甘さ、経験不足が事件の端緒となったことは否めないし
にもかかわらずほぼ実名入りで言い訳をする内容に嫌悪感を抱く人も多いと思う
しかし、前段の研究過程に関する記述は
極めて難解な内容を時系列も含めて可能な限りわかりやすく書かれており
この「わかりやすく」言う部分は、思ったほど簡単なことではない
大学時代も含めて全ての研究環境から隔絶され
世間やマスコミのバッシングで身も心も疲弊しきった中、ということも考えれば
どれだけ力を注いだことだろうと思ってしまう
これが小説ならばこの前段は退屈きわまりないのかもしれないが
後段の内容への導入としての役割は重要で
それがわかっていたからこその注力であったと思われるが
そもそも、この本の主旨は後段であり、本来はそこに重きを置きたかったのだろうが
そのための導入にこれほどのページを割き、しかもわかりやすく書いたところに
もともと彼女が持っていた真摯さを感じてしまう

論文とか書くんだから文章はお得意でしょ
とお考えかもしれないが、科学技術論文と一般的な文章は全く違うもので
むしろ論文書きに慣れていればいるほど、堅苦しい表現が多くなる
彼女には生来文才があったのかもしれないが
だとしても、プロットも文章にも論文とは異なる相応の苦労があったはずで
彼女にとっての真実を世に伝えたいという思いの強さを感じる

「真実を歪めたのは誰だ?」
研究内容では一人の教授、
その後の騒動においては彼女の言動をあるときは隠し、あるときは歪めたマスコミ
ということになる
ただ、世紀の大発見があまりの重大さ故に周囲を巻き込んだ大きな渦に成長し
彼女の関知し得ないところで様々な思惑を生み、絡み合い
一言で誰の責任とは言えない悲劇であった可能性もある
例えば、名前の挙がった教授にしても
今現在まで全く関与を疑われず、責任も問われないままきたことにも相当の不自然さが残る
理研も含めもっと大きくてどす黒い背後が存在するのではないかと
思わせる部分はまだあると思う
彼女のスポイトが作った小さな渦が、誰をどこまで巻き込んだ巨大な渦となっているのかは
彼女自身もまだわかっていないのかもしれない

しかし、そういった訳のわからない背後ややったやらないという水掛け論の一方で
絶対の事実も存在する
それは、日本最高レベルの研究者である笹井博士の命が失われたこと
そして将来有望な若い研究者の前途がたたれたことである
笹井先生のご冥福を祈るとともに
彼女にも何とかして汚名をそそぎ、研究ができるチャンスが与えられんことを願うばかりである
この本の購入は、そのためのささやかな応援だった・・・・
と書くと、最初から小保方寄りだったのかとばれてしまうのだが(笑)
邪悪な動機に基づく確信犯には、この本は書けないだろうと、やはりそう思うのである

こういった悲劇が繰り返されることがないようにとはもちろん思う
しかし、大学や大学出身者がトップを務める理研のような組織で
どこまでできるのかとの不信もぬぐえない
どうか、このたびの犠牲とも言える命の重さを無駄にしないでいただきたい



この本にコメントすることは結構勇気も必要でしたが
私にはそれに対するご批判をしっかり受け止めるほどの精神的耐性はありません
したがって、かる~~い反論まではウェルカムですが
バズーカ攻撃は全て削除いたしますので、ご了解下さい

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

はじめまして初コメです。匿名(K)
ZENN ZD100CEでたどり着きました。
動画やギター関係記事興味深くときどき拝見させていただいてます。
この本買いました。ほぼ同感です。
大人の事情や組織の都合に若い研究者が萎縮しない社会であってほしいと思っています。

zizi さんのコメント...

K様、初めまして!

ZENN ZD100CE、良いギターですよ
今はやや価格が高くなってるのが残念ですけど
良く鳴りますしエレアコとしてもそこそこ優秀です

「あの日」はどうにも人ごとと思えないような気がして
買ってしまいました
「科学ってもっと優雅なものだと思ってた」
という彼女の言葉がとても印象に残っています
K様がおっしゃるとおり
研究者が自由に発想と検証をできる環境こそが
人類の未来に繋がると思うのですが
本にも書かれてる様々な封建的構図が
一部では機能していたとしても、大きすぎる障壁となっている気がします

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