2021年9月6日月曜日

SENNHEISER e945 ダイナミックマイク(2/2)

 そもそも、なぜこのマイクを買ったのかというと、
「超単一指向性でそこそこ良いマイク」を探したからってのが理由でありました

超単一指向性マイク


改めて説明するまでもないかもですが、
ボーカル用ダイナミックマイクの指向性にはものすごく大ざっぱに言ってしまうと
 A:単一指向性(カーディオイド)
 B:超単一指向性(スーパーカーディオイド)
の2種類があります
要は、「マイクの軸線からどの程度離れた音まで拾うのか」という差で、
基本的に、超単一指向性マイクは単一指向性に比べて狭い範囲の音しか拾いません
ただ、両者がどういった基準で区分されているかははっきりしないので
A社の超単一指向性とB社の単一指向性はあまり差が無い、ということもあるかもしれません

さて、こうした指向性がマイクの使用上、どんな影響を与えるかというと
超単一指向性は、単一指向性に対して
 ・PAのある現場ではハウリングしにくい
 ・口がマイクの軸から外れると音量の低下が大きい
といったことがあります
今回、超単一指向性が欲しかった理由はこの「ハウリングしにくい」に期待したためでした

サンプル音源
e945を含めて3本のダイナミックマイクの比較音源を作成しました
 ①SENNHEISER e945(2万円強)
 ②SHURE SM58(1万円強)
 ③BEHRINGER XM8500(2500円前後)

比較しやすいように、機材&録音条件を以下に統一しています
 ・マイクプリ:GOLDEN AGE PRE73jr
 ・レコーダー:BEHRINGER XR16 USB録音
 ・マイクプリのゲインは全て同じ
 ・EQ、コンプ、リバーブは使用しない
 ・マイク1本でギターの弾き語りを録音(マイク距離は概ね10cm)
  (ギターはマイクのほぼ真下30~40cmに位置する形となります)
   ※)歌は下手くそです、ご勘弁下さいw

【①SENNHEISER e945】

基本的に中高域寄りのスキッとしたキレのある音です
極端な近接効果がない分、やや低域は物足りない感じがしますが
エッジの効いたやや固めの音は、私としては好みの部類です
少し驚いたのは超単一指向性ということで「ギターの音はあまり拾えないかも」と
予想していたのですが、そうでもなかったこと
 ※近接効果:マイクに近づくほど低音が強調される効果のことです



【②SHURE SM58】
角が取れたやや丸い音で、人によるとこもってると感じるかも知れません
しかし中音域が太いこのマイクは、聴き疲れしない無難な音でありながら、
バンドなどの楽器の音に埋もれにくい強さもあるように思います
さすがは、長きにわたって「超定番」の座を死守しているだけのことはある
そんな底力感を感じます


【③BEHRINGER XM8500】
なんといいますか、①②の中間的でやや②のSM58に近い感じと言えそうです
昔からすきなマイクでしたけど、こうして比較してみると2500円にしてこの音は驚異的
ただし、今回のXM8500は「グリル内のスポンジを取り除き不織布を詰め込む」という
プチ改造版となってますので、そこはご留意下さい
SM58をキモチ抜けよくしたような音、やっぱり良いわ~
実は、①②と同じ位置で歌うとクリップしてしまうので、3~4cm離れて歌ったのでしたが
それでも、音量的には①②よりやや大きめとなっています(このことは次節で)


音量、というかマイク感度の話
今回の3本のマイク感度を数字で比較してみると以下のとおりとなります
 ①SENNHEISER e945:感度:-54dB(0dB=1V/Pa、1kHz)
 ②SHURE SM58:感度: -54.5dBV/Pa (1.85mV)
 ③BEHRINGER XM8500:感度:-70dB
通常、マイク感度は数値が大きい(ゼロに近い)ほど大ききなるので
上記のサンプルのようにXM8500が音が最も大きいのは「おかしな結果」のようですが
audio-technicaによるマイク感度解説には以下のような記載があります

https://www.audio-technica.co.jp/microphone/navi/dic/02.html
---------以下引用----------------------------
マイクロホンの振動板に規定音圧(1Pa)を加えた時に出力する電圧を数値にしたもので、その単位としてデシベル(dB)/1パスカル(Pa)、または「mV/pa」と表示する。
まだデシベル(dB)/マイクロバール(μbar)という古い規格で表示されている場合もあるので、注意。その場合は数値に20dBを加えると現行規格での表示と同じになる。
最近のコンデンサー型の感度は高く、-30dBV/1Paから-40dBV/1Paの間にある。それに較べてダイナミック型はやや低くなって、-50dBV/1Paから-60dBV/1Paのものが一般的である。
---------引用終わり---------------------------

これによれば、「③BEHRINGER XM8500:感度:-70dB」がdB/μbarだとすれば
dB/pa換算で-50(-70+20)dB/paとなり、聴感上の音圧と概ね一致するのですが
マイク感度の表記はメーカーによって様々で、
実際のところは「よくわからん」というのが正直なとこですw

ちなみに、マイク感度が「mV/pa表記」の場合、「dB/pa表記」に変換するには
  20log(mV/1000) ※logは常用対数(底=10)
で計算できます
上記のSHURE SM58の場合、「1.85mV/pa」は
  20log(0.00185)=-54.66dB/pa
となって、ほぼカタログ値と一致します

また上記、audio-technicaの「数値に20dBを加える」というのは
  1Pa=10μbar
なので、出力電圧が「●mV/μbar」のとき、これを「dB/par」として計算するには、
  20log(●mV/1000×10)
とすればよく、これを分解すると
  20log(●mV/1000)+20log(10)
このとき、log(10)=1ですから、「20dBを加える」とよい、ということになりますね

まとめ
ボーカル用のダイナミックマイクの場合、
基本的な音質や声質とのマッチングももちろん大事ですが、
 ・ハンドリングノイズ
 ・ハウリング耐性
 ・PAとの相性
 ・オンオフスイッチの有無
 ・重量や持ちやすさ
 ・見た目のかっこよさ 等々
の総合力が問われることが多く、またボーカリストが重視するポイントも人それぞれなので
一概に「このマイクが良い」とは言い切れません

今回のe945に関しては、すっきりした音質に満足していますが
実は「実家スタジオ」がちょっとハウリやすい環境になってるので
超単一指向性を生かしてどこまでハウリング耐性を発揮するかが課題といったところです

しかし、過去にギター音のみのマイク音質比較はやってきましたが
ボーカルの比較は今回が初めてでした
そのなかで、XM8500というやっすいマイクの健闘ぶりは目を見張るものがありました
これが、グリル内部を詰め替え得るというプチ改造の成果なのかどうかは
今となっては確かめようがないし
今現在販売されてるXM8500が全く同じ音なのかどうかもよくわかりませんが
きわめてコスパの高いマイクだ~~とは、言えそうに思います


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